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そう思った青年は
結婚し、子どもを儲けた。
すべてはこの日のために。
「世界を滅ぼしたい」
この願いが揺るぐことは
今日まで一度もなかった。
しかし、今、この瞬間、思う。
自分の腕の中で微笑む、我が子。
この子の人生が、自分のせいで
たった数分で終わりを迎えてしまうことに
一抹の悲しさというか
申し訳なさというか
そんな、複雑な気持ちが
青年の心に湧いた。
絶望感。
そうか。と青年は思った。
バケモノは、この絶望感を俺に与えるために
あの条件を出してきたんだ。
してやられたな。
青年は声を出して笑った。
そんな彼を、妻はただ、
唖然として見つめていた。
地面の揺れが、段々と激しくなっていく。
暗いその病室から
青年の笑い声だけが、
いつまでも、いつまでも響いていた。
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