1:「何で今なん?」

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1:「何で今なん?」

bc288a0d-7b17-410a-adf8-b17214e1dafe A=愛染アキオ。甘党。あー言われたらこー言う、突っ込み体質。あっちむいて、ホイ無敗。愛煙家。アスパラガスが好きという奴を疑っている。あっというまに、27才。 924ac4a1-02bd-4670-96bf-8a00bf9bae50 B=ビスマルク・バインダッハ(尾藤バン)。ビール党。ボケ体質。バナナはおやつに入るけど認めたくはない。バンドのベースボーカル。ばしっと、27才。      1:「何で今なん?」 ルルルルル、ルルルルル。 スワイプ。 A「はい」 B「あのー…」 A「はい?」 B「ルルルルー鳴ってた?」 A「うるさいねん、人のデフォルト着信音をいじってくるな」 B「俺やけど。ビスマルク・バインダッハやけど」 A「知らん誰やねん。怖いて急に。ドイツ人ぽいことだけはなんとなしに伝わったけども」 B「ブルーアイズで肩幅の割りと狭い、眉間に皺の多い撫で肩の、体重65キロで右肩上がりの、身の丈14尺のビスマルクでぇす」 A「バケモンやないか。ドイツ人と肩シリーズの面白さ吹き飛ぶくらいのバケモンや」 B「え?俺やで、尾藤やで?」 A「ばらすの早ない?」 B「知ってた?声で分かる?」 A「小学生かお前。携帯は名乗らんでもええねんいちいち」 B「いや、お前たまに俺を見失ったりするやん?」 A「意味分からんこと言うな。いきなり自分を見失った奴がなにを上から言うてんねん」 B「ちょっとな、あんな、こんなことあってんけど」 A「待て待て待て、いきなりそんな入り方すんな、他に言うことあるやろお前」 B「別にないよ。だからな、こんなあってんけど…」 A「いやいやいやいや、あかんあかん、今からどんな壮大なお前のクリエイティブストーリー始まるんか知らんけど今何時?時計見てみ」 B「え、三時やけど」 A「午前?午後?」 B「AM」 A「せやろがいッ!まずはこんな時間にいきなり電話してごめんな、や!そいでもってどうしても今お前に伝えておかなあかんことがあるんや、ほう、どないしたん、あんな、こんなことがあってんけど、や!入り方間違うてるねん!」 B「分かってるよ、分かってるからこそいかにも『さっきからずっと喋ってました感』を出していこうと演じたみたわけやんか。そこの俺の憑依型アクトレスとしての実力をやな」 A「アクトレスは女やで」 B「ア、アク、……アクトマンをやなぁ」 A「ふふ、ちょっと格好ようなってるがな。マーベルからニューヒーロー出て来たか思たわ。おお、ええよアクトマン、出動したらええがな」 B「したがな。お前のもとへ飛んできたがな」 A「そんなんええねん」 B「お前のもとへフォーリングダウンやがな」 A「どういう意味で?タッチダウンとごっちゃなってない?」 B「ほいでもってお前とナチュラルなトークでアクションしたかったわけやん?」 A「え、アクトマンの中身はなに、ルー大柴なん?」 B「トゥーギャザーしようーぜえ」 A「夜中にそのテンションきついわ」 B「……」 A「しかもその割にお前、入りでいきなり名乗ってたで。全然さっきから喋ってました感出来てなかったで。ドイツ人に知り合いおらんし」 B「……………」 A「……?」 B「………え、それはやっぱりあれちゃう? 昨日食べたサバ味噌のケチャップ煮に当たってしもうたんとちga」 A「むりむりむりむり!そんな急に『いかにも感』出されてもむりやて!ほいでなんやサバ味噌のケチャップ煮て!どんだけ素材の味を殺すつもりやねんお前」 B「ちゃうやん、引っかかって欲しいのはそこと違うねん。ここで俺が伝えたかったポイントは『昨日』やねん。昨日食べたサバ言うてもな、昨日の朝か昨日の晩かで全然話変わってくるからな? 仮にほな昨日の晩としようや。ほいで今こうして喋ってんのが翌朝やってみい。そら腹下した原因は昨日のサバや。けどお前、実際サバ食うたんが昨日の朝やってみ? 翌朝こうして話するまでの間に結構他のもん食うてもうてるやん!そしたら腹下した言うても昨日の昼に食べたタスマニアデビルソースバーガーかもしれんし、夜にバイト先で食べたまかないの残りもんかもしれんやんけ」 A「それやッッッ!!」 B「えええッ!!??どれえええッ!!?? 俺今結構喋ったよ!!??」 A「俺は騙されへんぞお前。何がタスマニアデビルソースやあほか。お前昨日テレビで『激辛メニュー完食出来たら10万円』見たやろ」 B「…見た」 A「俺も見たわ!なんたらデスソースいうてやってたわ、尋常やない色しとったな」 B「しとった」 A「ええか、よう聞けよ。デビルやない、デスソースや。せやけどあれお前、デスはソースにかかっとんねん。死のソースや。お前が勝手にアレンジして言うたタスマニアデビルソースは『オーストラリアの珍獣ソース』や。それはそれで食えたもんやないと思うわッ!!!腹下す程度ではすまへんかもしれんけどな!!!」 B「……いや、あるで、タスマニアデビルソース。『クロコダイルダンディー』でやってたわ。俺も見たもん」 A「映画のけ!? 嘘つけ、PART何やねん!」 B「……5や」 A「ないわ!『PART2』と『in LA』の三本しかないわ!何を見て5や思てん」 B「……あっ、『バック・トゥ・ザ・ヒュー…」 A「3や。悲しいかな三作で完結や。あとヒューチャーちゃうで。フューチャーや。頼むでバンドボーカルのくせに」 B「それは言わへん約束やろがい!!」 A「どこにキレてんねん、ごまかすん下手か」 B「……なんの話やった?」 A「お前がバイト先のまかないの残りもん食うて腹壊した話や」 B「俺、ずっと便所から出られへんねん」 A「はいー、おやすみー」
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