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2:「何で急に?」
プルルルルル、プルルルル。
スワイプ。
A「はい」
B「あのー…」
A「うん」
B「そろそろ俺、宇宙飛行士になろう思うねん」
A「うん、うん」
B「……」
A「うん」
B「えっ、薄っ、反応薄っ!」
A「なんやねん」
B「うすっ。ウスミソくんが作った味噌汁くらい薄いわ!」
A「誰や、知らん、なんやそいつ。名前でフラグ立てすぎやろ。絶対濃い味噌汁作られへんやん可哀想に」
B「ほんまは笛吹(うすい)くんやねん。けど家庭科の授業で作った笛吹くんの味噌汁がほんまに薄かってん」
A「あるなー、それは。なんか入れ忘れたんかな、調味料的なもんをな。あんま言うたりなや、トラウマなってるかもしれんやん」
B「あれは衝撃やったわぁ、『小6の陣・尾藤、冬将軍に出会う!の巻!』やったわ」
A「いやもう色々おかしい……」
B「な」
A「な、と違う。まずそれは、皆に来るもんや」
B「何が」
A「何がと違う。『冬将軍』は皆にやって来る。皆出会うねん。残念やけど、お前だけの将軍やないねん」
B「…はあ?」
A「やめろお前全力で殴りそうになるわ」
B「電話を?」
A「お前や!」
B「冬将軍やで? 将軍がお前、そないようけおってたまるかいな」
A「いやいや。将軍がようけおるんと違うねん。お前が将軍に会うてる時、…冬やったんかな? 知らんけど。そん時皆が、俺もお前も、同じ時に同じ将軍に出会うてるんや」
B「……」
A「分かってくれたか?」
B「…いや、お前が会うてたんは冬家来とちゃうか?」
A「フフッ、誰が家来じゃ! あんまり寒ないやろそんな奴。パパーン蹴散らすわそんな奴来たかて」
B「好きにしたらええけども、ほどほどにしといたりや。家来も大変なんやから。将軍様に言われてよぉ、命令されて、行ってこーい!言われて、ワァー!行きよんねんから。ホンマは嫌やと思うで? 寒いし」
A「ほいでもお前はどうやってん。小6の冬に、ウスミソの薄い味噌汁飲んで、衝撃のあまり冬将軍に出会った(わけ分からんな)お前はそん時どうしてん。将軍様をどうしてくれてん?」
B「……」
A「……?」
B「……何を言うてんの?」
A「お前やっ!!!!」
B「ちゃうやんけぇー、もうー、ちゃんと聞いてくれよぉー」
A「なんやねん面倒臭い」
B「だから宇宙飛行士になるんやってぇー」
A「まだ続いてたんかその話。なったらええがな、どんどんなりいや。その代わりお前めちゃめちゃ努力せなあかんで?」
B「おおっ、当たり前やがな」
A「27から勉強し始めて、そうやな、150歳くらいになったらなれるんとちゃうか?」
B「その頃には俺はもう足腰弱なってる!」
A「おお!? おお……(死なんねや)」
B「でもお前の応援があったら俺頑張れると思うわ。これまじでやで」
A「まじか、ほんまか、ほな応援したるわ」
B「頼むで、指導教官にもよろしく言うといてや。あいつなかなか見込みあんでぇーいうてゴニョゴニョしたってや」
A「俺はどの立場におんねん!指導教官にゴニョゴニョ出来るレベルに俺はおるん?すでに?」
B「そらお前はおるよー。おるおる」
A「そうかあ、ほな言うといたるわ。あいつはたまに自分をドイツ人と偽りますが、いたって真面目な奴です」
B「あかんあかん、あほかお前。書類選考からやり直しになるわ」
A「幼い頃に冬将軍と出会い、時に自分を見失いがちになりますが、いたって足が臭いです」
B「臭いことあるか!……右足だけや」
A「右足だけどうしてん。何があってん、めっちゃ気になるやんけ」
B「宗教上の理由や」
A「小学生がプールの授業休む時の言い訳やないねんから」
B「右足だけは絶対死守やで」
A「かえって段々死んでいくと思うわ」
B「最終的には黒炭みたいになるから」
A「激シブやな。はよ見たいわ」
B「叩いたらキーーーンて金属音するねん」
A「それもう足ちゃうからな!」
B「もうええわ。お前みたいな薄情なやつ知らん」
A「そんなもんお前、27にもなって今から宇宙に行こうとする奴なんか、普通の事言うてたってあかんで。インパクトって大事やん?」
B「……あああ、インパクトなあ。……コンパクトではあかんもんね?」
A「……そらあかんやろお前、何を小さくまとまろうとしてんねん」
B「コンテストに受かりまくるぐらいじゃないと」
A「パクトで広げろやっ。何コンの方へ逃げてんねん」
B「せやから俺はあの夜空のパクト七星に願いを」
A「!!!(むせる)」
B「願いをあれするわけやんか。笛吹くんの味噌汁が濃くなりますよーにー」
A「もうええねんその話は…」
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