幸せのかたち

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ただ、音楽は素晴らしい フェラクティがパンツ一枚で サックスを吹いて黒人解放運動したのも 音楽という魔法で 何か変えてやるという心持ちになった 心境も伺えなくもない 半笑いになりながら 喫茶店を出ると、俺はサックスを取りに 散らかった自分の家に一旦戻り 家から徒歩20分くらいの 池のある大きな公園へと急ぐ 池には蓮の葉が多く浮かび上がり 頭の上のほうでは 夕暮れが今か今かと落ちそうに 光のシャワーを池に投げかける きらきらと輝く池にむかって 俺は思いっきりサックスを吹く 池の周りにいた 白い小さな鳥達が一瞬にして バサバサと夕日へと向かう あーこれもまた至福 自分のサックスから出るあふれんばかりの メロディーが 水面に反射して遠くへ遠くへと響く 通りすがりの 老人が、声をかけてくる 「トランペット?いいメロディー 踊り出し くなっちゃった」 俺は「サックスです」と真顔で返す 「ごめんなさいね すごく素敵ね おばあちゃん、趣味がなくてね 続けるのが大事なのよ なんでもね わたしの旦那さんはバイオリンが趣味でね もしかしたら趣味が合うかもしれないわ」 そんな風に旦那さんの話を俺にまじまじとしだした 「バンド組みましょうと言って おいて下さい」 そんな軽口で俺は返す そして遠く遠くへ向けてサックスの メロディを響かせる 何時間吹いただろうか 気づけば夜であたりは薄暗い ガラガラガラガラ ガタッ シュッ ヒュッ シャーガッタン スケボーの練習の少年達が集まりだした ひとりの少年が 「格好いいっすね!サックス!」 とビール片手に近づいてきた 俺にビールを手渡して 「乾杯」とふわっとした笑顔で笑う 俺もにかっとはにかみながらも ビールを受け取り 「ざーっす!乾杯!」と 酒を酌み交わす 仲良くなったスケボー少年はしんちゃん というらしい その他に滑ってる少年達も近付いてきた しんちゃんにさくちゃんにたけちゃん あっという間に打ち解けた 少年達は24歳 俺は27歳 俺たちはその辺の 地べたやベンチに座った 「兄さん、サックスいつからやってるんス? 俺らスケーターはいつも21:00頃ここで 滑りながら飲み会てワケっスよ」 少年達がどやどやと笑顔でビールを片手に 笑う 俺「ビールありがとう!サックスは今日は 夕方かれこれ4時間は吹いてる」 もう4時間も経つのかなんて思いながら ポツリと話す 少年達は顔を見合わせて 「ストイックー!」とはやしたてた ガラガラッ シュッ 少年のうちのひとり、たけちゃんが スケボーで遊び出した グワッと風を切ってダッシュ プッシュ プッシュ オーリー 成功! 決まったと言わんばかりにこちらを向いて バンザイをする、たけちゃん 歓声が上がる 気づけば俺は、少年達と居酒屋に むかっていた 「縁もたけなわー 今日は飲もう!」 威勢のいい声を上げて 俺はほんわかした気分で 少年達と居酒屋に向かった 毎日というのは、小さな一日の中に 希望を見つけて続けていくものなのかな なんて‥ そんな事に気付ける俺はきっと幸運だ またも同じことが 違うシチュエーションで くるくると頭の中を回った
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