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満開の桜並木の下、新しい制服で慣れない通学路を歩く。
家から遠すぎないこと。治安が良いこと。こだわりがなさすぎると怒られた高校選びの基準を思い出す。結局決めきれず、母がこの高校の放送部をとても気に入っていたからここにした。今のところ後悔はしていない。
「サッカー部入りませんかー! おっ、そこの背ぇ高い君、サッカーどう?」
「すみません、もう決めてるので」
「そっかぁ、決めてるんじゃ仕方ない。またねー!」
からりと笑う男子生徒に会釈してその場を離れる。しつこく食い下がられないとそれだけで好印象だ。勧誘する人はみんな彼を見習えば良い。
勧誘の嵐をなんとか抜け息を吐く。運動部からの勧誘が後を絶たないのには閉口する。背の高さとスポーツへの好奇心は比例しないことを知らないのか?
階段を上りながら手元に視線を落とした。嵐の中一枚だけ貰ったチラシは放送部のもの。ここの放送部は全国大会常連で現顧問が優秀らしい。以上、母情報。
手元の紙には「全国大会常連!」「一緒に楽しみましょう!」「部員一同お待ちしております!」などそれらしい文章が並んでいる。
「部室棟三階、か」
放課後に向かう場所を確認して、紙をポケットにしまった。
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