恋愛は自動更新?手動更新?

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恋愛は自動更新?手動更新?

メンズアパレルブランドの仕事は今までたくさんしてきたけど Immeubleとの仕事が始まってからは なんとなくImmeubleは今までのようにはいかない気がして、ブランド戦略もかねて、ショップリサーチをよくしていた。 その事をタロ先輩から聞いたのか西山さんから 【週末もリサーチするなら(柴崎)聖也に付き合ってもらえば】 とLINEがきた。 【お仕事忙しそうだし休日までは】 【聖也なら喜んで付き合ってくれると思うよ】 確かに喜んで付き合ってくれそうなタイプだけど そういう問題じゃない…。 柴崎さんは服が好きで おしゃれが好きで 人が好きで 今の仕事を100%楽しんでやってるって感じがする。 アーバンクルーズでも最年少でプレスをしてるぐらい実力はお墨付きだし 今後はバイヤーも兼任するかもしれないと噂で聞いた。 人懐っこくて見た目も可愛いのに しっかりとした発言と行動力を持ってて どこからどう見たってイケメンすぎる。 そんな人と休日一緒に過ごすとか普通にちょっと無理って事なんだけど…。 そう思いながらも 【時間がもし合えばお願いしてみます】 と西山さんの申し出を断りきれない私は社交辞令で返事を返した。 「愛さーん。Immeubleの柴崎さんからお電話です。」 “柴崎? 西山さん、仕事が早いと言うかなんと言うか…” 『お電話変わりました。櫻井です。』 「お世話になっております。アーバンクルーズの柴崎です。」 『どうされました?次の打ち合わせの資料はまだもう少し練りたい部分があって…。』 「あ、いえ。資料は大丈夫です。えっと、あのですねリサーチの話をお伺いして…。」 “やっぱり…” 『すみません。お気になさらないでください。大丈夫です。』 「いや…。良かったら、僕がご一緒したいなと思って…。」 “えー?そっち??” 『でもお忙しいのに休日までお仕事モードはさすがに…。』 「完全プライベートのつもりで行けたらなと思っています。」 “なにそれ。そういう類のワードはアラサーの辞書にはないんだけど…” だけど、このままじゃ埒があかない気がしたから 『それならお願いしても良いですか?』 と言ったら、なんとなく嬉しそうな声色で 「はい!じゃあ後でLINEしますね。 それのご連絡だったので。では失礼致します。」 と言って柴崎さんは電話を切った。 はー、まじか。 男の人が苦手とかそういう事じゃない。 ただアラサーともなるとおひとりさまが得意になってきて、なんならおひとりさまに楽さを感じてしまうから、休日くらい“楽”を感じたいっていうのが正直な気持ちで…。 たかが取引先の一担当者、されど一担当者。 別に忖度とかでもないけど、多少は忖度のような…。 はー、ドッと疲れた。 こういう時は美味しいランチを食べて気持ちをリセットしたい。 先輩におねだりをして直と美奈ちゃんを誘ってお高めのランチに行くことにした。 「柴崎さんからの電話って企画書の件でした? 私ちょっと進捗遅れてるから気になってて。」 『あー全然違うよー。てゆーか先輩、西山さんに私がリサーチ行ってること言ったんですか?』 「おぉ。確か、お前を新宿で見かけたって言っててさー。あーリサーチじゃね?って話したわ。」 『西山さんから連絡来てリサーチしてるなら週末は柴崎さんとすれば?って言われたじゃないですか!柴崎さんの電話はそれだから。』 「あー。」 『直、土曜日ヒマだよね?付き合ってよ。3人で行こ。』 「土曜はちょっと…。それにそれは愛さんだけで行った方が良いと思うよ?」 「リサーチなんてただの口実なんだからとりあえず行ってやれよ。これは上司命令。」 『…。なにそれ、なんの口実?意味わかんない。』 私は不満たっぷりにそう言ってはみたけど、本当は少しわかってる。 “口実”って言葉の意味を。 その日の夜、柴崎さんからLINEが来た。 【Immeubleの都内の店舗はもう見られてますか?】 【はい。東京は全部お伺いしました】 【じゃー湘南店行ってみませんか?あそこは都内とはかなり趣が違うのでブランドを知ると言う点では良いと思います】 湘南か…。いろんな意味で微妙さを感じるのは私だけかな。 【わかりました】 【じゃー土曜日、11時に迎えにいきますね】 完全プライベートって言ってたけどどうしよう。 どの立ち位置で行くのが良いんだろう…。 友達、じゃないし…。 職場の同僚、も違う…。 近所のお姉さん、ほど親近感もない…。 知り合いの年上お姉さん、が妥当だな…。 それにしても4歳年下男子とのお出かけって何を着れば良いんだろ。 カジュアル、って若作りしすぎ? きれいめ、って期待感ですぎ? キレカジ、妥当だな。 あーほんと休日に男の人と出かけるっていろいろ大変すぎ。 この3年、男の人と出かけるってなるとそれは=デートで異性としての認識っていうか、それなりのことがあるって予測もできてたし、自分もそれなりに気持ちを作ってたとこあったけど 今回みたいに、ふわっとしてるのはほんと久しぶりすぎてわかんない。 ましてや、年下で、イケメンで自分に好意を持ってくれてるかも…なんて人。      *** この3年、誰とも続かなかったのは 良いところも悪いところも いつも無意識に比べてしまっていたから。 私の心に住みついて 色褪せることないあの人への感情は 執着と言うのか、未練と言うのか。 携帯のアプリのように 自動更新がされない恋愛は 運転免許のようにどこかに赴いて 手動更新するしかないのか。 それを面倒って思ってるわけじゃない。 ただ更新するのが怖い。 自分が変わりそうで。 それは相手が年下でも年上でも 合コンで知り合っても紹介でもナンパでも もちろん仕事関係者でも…。
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