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昔から要領の良い方ではなかった。人と同じことをするのに、人より多く時間がかかった。それを苦に思ったことはない。むしろ、
「祐くんは頑張り屋さんね」
そう言われることが嬉しかった。なんでも出来る優等生よりも、自分の方が優っている気がした。
「田嶋、頑張ってるな」
だが、この歳になれば言われ慣れた言葉が、大して褒め言葉でもないことに気がつく。それでも仕事にはプライドを持っているし、真面目にコツコツ取り組んでいるつもりだ。
絶対、周りに迷惑はかけない。
「庶務課の田嶋さんは、今日も残業ですか?」
不意に背後から掛かる爽やかな声。聞き馴染んでいることは全く本意ではないけれど、振り返らずとも誰か分かる。
「そういうあなたは、なんでまだ居るんです?営業の篠崎くん」
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