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ドア横の壁に寄り掛かるのは、営業課の篠崎という男だ。今時の小作りな顔に、ふわふわと緩く跳ねた明るい色の髪。 黒髪に眼鏡という、地味な風貌の自分とは正反対の存在だ。 「酷いなぁ。遊里子ちゃんとの話が盛り上がっちゃったんですよ」 言いながら近付いて来るのを、背中に感じながら、パソコンをシャットダウンさせてデスクの上を片付ける。 「遊里子ちゃん…あぁ、宮内さんですか」 宮内遊里子は、うちで受付をしている新入社員だ。はにかみ気味の笑顔は初々しく、しかし女性らしい華やかな雰囲気も纏っている。 ふと、彼女と篠崎が愉し気に言葉を交わすところを想像し、原因不明の目眩に襲われる。 遠過ぎる世界に、頭がついていかないのだろうか。どれだけ頭の容量が少ないのだ。 「そう、ですか。それは、さぞ有意義な時間でしたでしょうね」 「なんか突っ掛かりますね。怒ってます?」 「私が、なにを怒る必要があるんです?」
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