不気味の星

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夜空の星が綺麗だって? あれは醜い痘痕(あばた)じゃないか。 星は夜空の病なんだ。 不気味の星が、恐ろしい病を運ぶんだ。 エドワード・ダン・ベイリー『不気味の星』 僕はいじめられていた。理由は?大したものじゃないだろう。ただ直接の原因は、クラスの主人である清子(きよこ)(かん)に障ったからだった。 昔は二人とも大人しく本を読むような子供で、仲もよかったけれど、彼女は美人の女子高生になり、僕は陰気な本の虫のままだった。彼女はそんな僕を憎むようになった。 「 キメーんだよ!消えろや!」 清子の取り巻きの輝美が、机にかじりつく僕に叫ぶ。 罵声と笑い。イジメといっても殴られるわけじゃない。彼ら彼女らの娯楽になるだけ。安心して言葉で叩けるサンドバッグになるだけだった。 清子はそれすらもせずに、うなだれている僕を冷ややかに見つめるだけ。不気味な虫がもがくのを、時たま鼻で笑うだけだった。 僕は本当の虫のように心を鈍感にした。そうやって数ヶ月を過ごした。 そのアプリを見つけたのが、夏休みの前。スマホを起動すると、通知欄にそのマークが浮かんでいた。 黒地に白い粒が散っていた。恐らく星空。そしてその上に描かれたマーク。忘れようのない、あの印。淀んだ虹色の、五芒の星だった。 アプリの説明にはこう書いてあった。 『あなたが人から気持ち悪がられるのは、不気味の星を見たからです。不気味の星を一度見た人は、たちまち気味悪がられ、のけ者にされて嘲笑われるのです』 『そんな時にはもう一度不気味の星を見ましょう。二度見ればあまりの不気味さに、人々はあなたを避けていき、平穏な生活が取り戻せます。』 あんまりにも馬鹿馬鹿しい内容だった。馬鹿にされていると本気で怒りがわいた。 それでもそのアプリをダウンロードしたのは、そのチープな画像に言い様の無い不気味さを覚えたから。確かに不気味な星だったからだ。 ダウンロードはあっという間に完了した。機能は呆れるほど単純なもの。僕がそのアプリを開くと、宣伝用のものと同じ画像が表示された。他には何の操作もできない。 一つ違ったのは、その星が輝いていたこと。キラキラなんてものじゃない。むしろイカが体色を変えるような、奇妙に滑らかな変色だった。
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