不気味の星

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効果は速やかに現れた。登校した僕を見るや否や、誰もが僕から目を背けた。先生さえ質問で僕をあてない。僕は元の生活を取り戻した。 もともと人と話すのは好きじゃない。静かに本を読んでいられたならそれでいい。その時はそう思い、用済みになったアプリは削除した。 『不気味の星』が噂になりだしたのは、秋が終わるくらいだっただろうか。あんな怪しいアプリのことなんてほとんど忘れていた。  これまで僕みたいにいじめられていた奴が、急にいばりだしたという。かなりひどいことまでやっているが、誰も口出しさえできずに怯えているそうだ。   そして、そいつが使ったのが『不気味の星』だという。  盗み聞きで分かるのはそこまでだった。質問しようにも、僕が近づくと皆が逃げていく。あのアプリを探してみたけれど、どんなに検索しても見当たらなかった。  そこで、僕は噂になっていたいじめられっ子、今になっては元いじめられっ子に話を聞くことにした。  見つけるのに苦労はしなかった。一目で気持ち悪いと感じたから。異様だ。不気味だ。気色悪い。我慢して声をかける。彼は驚いていたけれど、僕の身の上を説明すると安心したようだった。 「君も不気味の星を見たのかい?」 「ああ。二回な」 「二回?」  思わず聞き返した。見る回数で何か変わるのだろうか。 「説明を見なかったのか?書いてあったぞ。一回見た場合はただ嫌われるだけ。俺やお前は初めからその状態ってことだな。もう一度見ると、不気味過ぎて関わりたくなくなる」  今の僕の状態だった。 「じゃあ、そこからもう一度見ると、今の君みたいに?」 「そうなるな。すごいぜ、これ。みんあ俺にビビッてさ。殴っても蹴っても何も言えないんだよ。クラスの人気者も、昔の俺みたいにさ」  そいつは本当に楽しそうに笑った。星の効果なのか、その笑いは何より不気味だった。人間じゃないみたいに。   「じゃあ、もう一回見るとどうなるんだろう?」 「さあ?四回見た奴はいないらしい」  そいつはそれ以上話そうとはしなかった。良く考えたら、向こうから見ても、僕は不気味な何かだったんだろう。お互い長く顔を合わせたくない相手だった。その後その生徒と会うことはなかった。  また風向きが変わりだしたのは、冬休みが終わり、新年になってからだ。
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