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プロジェクターのコンセントを引っこ抜くと、後には影も形も無い。ただ、床に虹色に光る泥のようなゲルのような物体がこびりついていた。それだけがバリケードを叩き壊したバケモノのなごりだった。
「どうするの、これから」
清子は呆然としている。いちおうは友達だったはずのものが、今やグズグズのゼリーになっているんだから当たり前だ。
僕にも大した考えがあるわけじゃなかった。でも確かなのは、これ以上ここにはいられないということ。窓がガタガタと揺れだした。入ってくる気だ。
パソコンとプロジェクターをまとめて持つ。切り札はこれしかない。
「とりあえず出よう!できるだけ下を見ながら歩くんだ」
「う、うん」
図書室の外はやはり暗い。でも天上のあたりに光が差し込んでいた。たぶん下に、グラウンドの方に集まっている。
逃げ場はあるのだろうか。目をつぶれば大丈夫だけど、あいつらは力も強い。取り押さえられたらおしまいだ。
とりあえずは下に降りた方がいいと判断した。いずれにせよあいつらの真ん中を突っ切っていかないことにはどうしようもない。
走り出そうとした時、清子が自分から喋った。
「ねえ。あいつらなんでここに集まってるのかな?」
「なんでって、君を追ってだろ?」
「輝美だけならそうかもしれないけど、他の奴らが来る理由ってある?あなたも、別に恨みを買ってた感じじゃないし」
確かに、清子は有名人だったけど、こんなに多くの怪物を動員できるほどか、というと疑問だ。僕は論外。
しかし、人が理由でないなら、あと考えられるのは。
「場所?学校に用事があるのか?」
「学校じゃなくて、その上かも」
「上?」
「空。スマホの光、どんどん強くなってる。近づいてるんじゃない?」
ポケットを見ると、ほとんど懐中電灯のように輝いている。『不気味の星』はアプリという形で現れた。つまりは電波に乗って。その大本、放送今日のようなものがあって、それが宇宙からやって来たなら。
「星を目指しているのか。不気味の星を」
不気味の星だ。不気味な星ではなく。不気味さをつかさどる天体。精神を操り、仲間を増やすバケモノ。
「倒せるんじゃない?光を浴びせたら。輝美みたいに」
清子がプロジェクターを指さす。僕は頷いた。
「グラウンドに出よう。不気味の星を落とす」
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