夏山

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「直美!お前が好きだ!」  すると、向こうの夏山から叫び声が返って来た。 「直美!お前が好きだ!」  健一は山彦だとばかり思い、もう一度叫んでみた。 「直美!お前が好きだ!」  しかし、今度は叫び声が返ってこなくて重なり合うように聞こえた。  これはどういうことだと思った健一は、また叫んでみた。 「直美!お前が好きだ!」  すると、またもや叫び声が重なり合うように聞こえた。  向こうから同じことを叫ぶ奴がいる。  そう勘付いた健一は、向こうの夏山の方へ下りて行くと、同じく下りて来る者を谷合まで来た時に認めた。  隆だ!  親友でありクラスメート。その彼が自分と同じく直美に恋をしているのだと健一は分かると、僕らの間にシンクロニシティが起きたのだと思った。  隆もそう思った。彼も健一に気づいていたのだ。
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