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失われた森
「うわああああ。パパァァ!!!」
鋭い木の枝が、パパの体を貫いた。パパはその場で動けなくなり、振り向くと一匹のバケモノが、こちらに近付いてくるのが分かった。
「ラミィ……。逃げろ……」
パパを射抜いたバケモノが、近づいてくる。私は、咄嗟に大木の裏に逃げ込む。
そのバケモノは、木の枝の様な不思議な物を手に立っていた。バケモノの傍には、もう一体のバケモノが。同じような鋭い木の枝を手にしている。その手からまたしても、鋭い木の枝が放たれる。
放たれた枝は、茂みを物凄いスピードで突き進む。その先には、茂みから突き出た大きな角が見える。あれは……。
「カールサム!! 逃げてぇ!!!」
私の叫びもむなしく、木の枝はカールサムの胸のあたりに突き刺さった。
茂みの中に倒れたカールサム……。動く様子もない。
私は泣きながらその場を離れた。
独り家に戻った私。家に戻った私は、パパやカールサムの身の上に起こった悲劇をママに伝えた。ママは泣き崩れて、森の奥に消えていった。ママの行き場所は分かっている。ヴァルカン様の所だ。
ヴァルカン様とは、この森の守り神。全身が炎に覆われた火の神。
「ラミィ……ぼくたちもあのバケモノに殺されて、この森もやつらの住処に変わってしまうの?」
震えながら、私を見る弟のピルエ。
「大丈夫、ヴァルカン様がいれば、この森の奥まではバケモノたちはやってこない」
生まれた時からバケモノたちの所業に、悩まされていた私たち。森の木々を切り倒し、仲間たちを次々に殺してその巣を拡大していくバケモノたち。それは、ただ生きるために行なう行動とは、とても思えない恐ろしい所業だった。
そんな中、ついにヴァルカン様が立ち上がった。
バケモノたちの前に現れたヴァルカン様は、森に侵入しようとしていたバケモノたちを一匹残らず紅蓮の炎で焼き払った。
数日後。
森では大変な混乱が起きた。
ヴァルカン様が、バケモノの集団に殺されたのだ……。
ヴァルカン様を殺したバケモノたちは、更に森の奥にまで足を踏み入れてきた。
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