とあるマンションの住人の恐怖の日々

1/10
前へ
/17ページ
次へ

とあるマンションの住人の恐怖の日々

 ……廊下になにか居る、と私は思った。  とある土曜日の朝のことだった。  マンションの廊下に出たら、薔薇の花を持った彫像が立っていた。  彫像です。  なにか人ではないものです。  人だと言うには、なにもかも均整がとれすぎていて、美しすぎるし。  第一、人の気配がしませんっ!  そして、何故、真っ赤な薔薇っ!? 「……おはようございます」 と彫像の前に居た、たまに挨拶するOLさんらしき人と目が合う。  人は信じられないものを見たとき、軽く現実逃避をする。 「あっ、お、おはようございます」 と早口に挨拶をして、私は足早にエレベーターの方へと逃げ去った。  とりあえず、視界からその彫像を消そう、と思ったのだ。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

898人が本棚に入れています
本棚に追加