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霧子はバルコニーで膝の上にちょこんと座る子猫を撫でていた。
遠くを見つめていた子猫がにゃあんと鳴いた。柔らかな動作で霧子に体を擦り付ける。その度に彼女は小さく微笑む。
子猫を撫でながら、霧子は曇天の夕暮れを見上げた。
どこかで呼び子が鳴った。
遠くの方から聴こえてくる音に霧子はまるで気付かない。
呼び子は三度、音を鳴らした。
世が忌むことは闇夜である。
子猫がとんと自分の膝から降りると、霧子は立ち上がり、部屋の四隅にあるランタンに火を点けていく。全てのランタンが灯った頃には日が完全に沈んでいた。
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