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「あなたは集合意識の中で、ただひとり自我に目覚めてしまった。
いろんな人のいろんな思い出が、統合されてあなたになった。
そして、あなたの心が、このクラスやデートの場所の仮想空間を作り出した。
でも、あなたは、それが仮想現実であるとうっすらと気づいてしまった。」
黒板横のスクリーンに画像が映し出される。
荒廃した世界・・
灰色の大地・・
灰色の空・・
生きている人は、そこには映し出されてはいなかった。
「外の世界は、
人が作り出した大量破壊兵器によって、人の世が滅びの時を迎えようとしている。」
「大規模な戦争の事の発端は、些細なものだった。
結果的にそうなったけど、最初は飢餓で苦しんでいる訳でもなく、治療のない感染症で悩まされているわけではなかった。
でも、それでも人間は平和のためと言いながら、いかに狡猾に、いかに効率よく人を滅ぼすかだけを考えたような兵器を、いくつも作り上げた。」
カヨちゃんは、さらに続けた
「それは、人の皮を被った、人に似たバケモノが作り出したものではなく、他ならない人が作り出したもの。
それが、人が人を追い詰めるための大量破壊兵器。
それによって、瞬く間に世界は滅びを迎えた。
この世にバケモノがあるとすれば、それは人の心の闇に他ならない。」
私は愕然とした。
この救いのない惨状を、他ならない人が作り出したと言うのか。
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