ラ・ヴァルス

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 「汚染された土地。悲しみと苦しみに満ち満ちた世界で、人はせめて魂だけでも安寧を求めるために、魂を寄せ集める技術を完成させたの。 それは、最後の希望でもあり、最後の安らぎでもあったのよ。 いつか自然の自らの治癒力で、世の中が清浄になるように願いを込めて、 いつか、世界から人間が許される日を願って。 それが、『ラ・ヴァルス』システム。」 そうか、そうだったのか・・。 あの曲のイメージは、私の今の居場所そのものだ。 「終止符の後の現実世界を生きるには、あまりにも辛いかもしれない。 でも、その現実を受け入れられるのも、他ならない人間なのよ。」  しかし、魂だけの揺りかごである、この『ラ・ヴァルス』システムのなかで、私の出来ることはなんなのだろう。 その私の気持ちを察してか、カヨちゃんは続けた。 「私はあなたと現実世界を(かよ)わせてつなぐもの。あなたが目覚めたいのであれば、作り物の身体だけど、そこにマナを宿らせることも出来る。そうすれば、人間が今すべきことが見つかるかもしれない。」 そうか、そうだったのか・・  私を含め、世の中にとって、人が許されるためには、まずは現実と向き合わなくてはいけないと言うことか。 ならば、私はそれを望む。 「カヨちゃん ・・私は、真実を望む。」 カヨちゃんは、 「本当にいいのね・・。」 と言った。 「じゃあ、まず、身体を休めて。 目を閉じて、 ゆっくりと呼吸をして。 次に目が覚めたときには、あなたは、現実の世界にいる。」
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