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「マナ」
と、私の名を呼んだカヨちゃんの表情は、いつになく真面目で硬かった。
「マナ、あなたは私が思うよりもずっと、自我と同時に知能を身に付けた。
それに、ラ・ヴァルスの意味にも気付いた。
だから、もう隠せそうにないから、もう話すね。」
少しのため息のあと、
「ここは・・
実態のない世界よ。」
さらに一息おいてから、
「ここには基本的に、あなたしかいない世界。」
と、カヨちゃんは続けた。
「私は、あなたと外との橋渡しのためにいる、あなたではない存在。」
カヨちゃんは何を言っているのだろう。
何の事を言っているのだろう。
「何言ってんの?
そんなわけないじゃない。
だって、クラスメイトだって・・」
そう言って、マネキンとポップスタンドのクラスメイトを見回す。
これは・・これは現実なの?
「だって、遠くの山並みだって・・」
そう言って、クラスの窓の外を見渡す。
山並みがない・・
それどころか、フェンスの先に見えていた、赤茶色の電車が走っていない。それに、電車の線路がない・・
その先にあった風景は、真っ白だ。
何?
これが現実なの?
ひょっとして、おかしかったのは、私なの?
でも、でも、
こんなのはウソだ!
こんなのはウソだ!!
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