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吐き捨て場
知ってるか知らないか、私の町にはとっても不思議で便利なゴミ捨て場がある。毎月第3金曜日の午後5時30分からの10分間、町の中心にある大きなゴミ捨て場は、沢山の人たちの"吐き捨て場"になる。何を捨てるかって? もちろん普通のゴミじゃないのは言うまでもなく。捨てるのは心のゴミ。
あんな人の、こんなところが嫌い。その人のこれがムカつく。――さんのクソ野郎! とかね。色々あるよ。何を言ったっていいの。どうせ悪口言われてる人は吐き捨て場には居ないだろうし、もしいたらいたでその人だって誰かの悪口言ってるわけで、何にも悪いことないでしょ?
私が吐き捨て場の存在を知ったのは1年前。中学校入学と同年にこの場所を知った。友だちが教えてくれたんだ。
「数学の先生さあ、教え方下手くそだし滑舌悪いし何言ってるかわかんないんだけど! マジやる気なくなる。皆よくやってるよね。私は無理だわ!」
投げやりに言った私の言葉をニコニコ笑顔で女の子の友だちは受け止めてくれた。
「そんなに嫌なら、いいこと教えてあげる。きっとスッキリするよ」
最初は、まるで危ない薬物に手をだした気分だった。もちろん危険な薬なんて貰ったこともないし使った経験もない。だけど、心がザワザワ落ち着かなくて正直ちょっとだけ怖かった。いつもお母さんにゴミ捨てを頼まれている場所が、特定の時間にだけ姿を変えるなんて思っても見ないことだったから。
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