和みと決別

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とある夕方。 私の家の前の電線に、(つが)いのカラスが止まっている。 その2羽に目を向けると、そっぽを向き、 また目を離すと、目線を元に戻す。 その番いのカラスは、私にとっての幸せで、和みだった。 でも、そんな日々もつかの間。 夕方に電線へ目を向けると、カラス対策がされていた。 とげとげのカバー。 もう番いのカラスはいない。 たぶん誰かが、通報したのだろう。 そりゃ、鬱陶しく思う人もいると思う。 でも、でも……唯一の和みだったのに。 あの日から、番いのカラスは一度も見ていない。 まだ近くに居るのか、それとも遠くに行ってしまったのか、 それすらもわからない。 ただ私は、未だにつけられているとげとげを見てこう思う。 「元気に、暮らしていますように」
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