□■□初恋は泡沫のように ─後日譚

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両親が亡くなり、しばらくした頃。 その日はうちに沢山の人がやってきた。 当時の社長や弁護士の人、父の上司…そして、あの彼も。 そして差し出された一枚の書類──それを見て、私は言葉を失った。 「いや、こんなに…貰えない、です……」 ようやくの思いで、絞り出た言葉。 なぜこの言葉が出たのか。それは目の前の書類に書かれてあった数字は、途方もない金額が書かれてあるから。 そしてそれを…両親を亡くした"慰謝料"として私が受け取る。そんな内容だったからだ。 動揺してキョロキョロ視線が泳ぐ私に、当時の社長は諭すようにこう話した。 「正直な話をすると、史暁さんの研究資料はこの業界にとって一番価値のあるもの。まずそれをわかっていただきたい」 そして頭を床につける勢いで、頭を下げる。 「だからこの金額を払う代わりに、全ての研究資料をこちらに譲っていただきたい。勿論入社をする前の…大学で研究していた時代の資料も全部」 そう言われて─ピンとくるものがあった。 父は結婚する前まで、大学で独自の研究をしていた。今この会社で行っている研究は、既にこの時に構想があったものなんだと。
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