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そしてシンジは、定番にしている――ケント・ワン・ロング――を買い、店を出て、ふとコンビニの倉庫の方を見た。
そこに、黒い靴をはいた男性の足らしいものが見えた。
シンジが近寄ると、ボロ服を着た老人が倒れていた。
「もしもし、大丈夫ですか? 救急車を呼びましょうか?」
すると老人は、薄っすら目を開けて、
「いや……オカネが無いので救急車はダメ……」
「じゃぁ……」
とシンジが困っていると、その老人が少し体を起し、
「悪いが……わしが住んでいるアパートまで、連れてくれませんか……?」
「ええ、いいですよ」
シンジは、その老人を肩車して起すと、彼が言うとおり道をたどって行った。
それから十数分後……
やがて……山に近い草むらの中に建つ1軒の中古アパートに到着した。
古い長板に書かれた名称は『さかえ荘』となっていた。
すると老人は、何度もうなずき、
「親切なお方……ありがとう……。
済まんが、もう少し……この奥の部屋です……」
シンジは仕方なく「はいはい」と、その部屋の前まで歩をつづけた。
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