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幸か不幸か、どちらなのだろうか。
現状を見れば、間違いなく不幸だろうと、人は言うのかもしれないけれども。
ぼくは彼らが全く見えなくなるという事態は回避できたようだった。
だから今でも、時折あの頃と何ら変わりない姿を見せてくれると嬉しくなる。
いつだって懐かしさと、愛おしさが混じった温かな気持ちになれる。
覚えている。
ぼくのセンスのカケラもない名前を喜んでくれた君が、妻と我が子を連れて来てくれたこと。
中学時代、あれは塾の帰り道。あの君より少しだけ薄く色づいた炎に、ほんとうに小さな、片手で包みこめる新しい命。静かな君が珍しくぼくの手にじゃれるように来てくれた。あたたかいねって。
ぼくらは確かに笑い合っていた。
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