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上司に退職の話をすると、すぐに上層部へ話は通ったようで、拍子抜けする程の速さでぼくの退職は決まった。
あのような醜態を晒すような、霊に憑かれたなどと得体の知れないことを述べる、頭のネジが何本も飛んでしまった新入社員が自ら去りたいと言っているのに、説得などしようと思うだろうか。
お前の変わりなどいくらでもいる、という定番の台詞を直接耳にした訳ではないが、なんとなく、雰囲気だろうか、分かった。
他にも、ぼくみたいになった奴がいたのだろうか。いたのかもしれない。
送別の花束を片手に、ぼくは会社を振り返る。
真っ白な世界で、手元を彩る花の存在が、酷く異質なもののように感じた。
それから三ヶ月程、経った頃。眠れば薄気味悪い悪夢に出迎えられるのが日課になっていた、ある夜のこと。
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