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黒い髪の弟
アルフレッドが初めて弟に会ったのは、彼が十二歳の時だった。
父に呼ばれて書斎に行くと、父親の後ろに隠れるようにして立っている小さな子供が目に入った。
歳はアルフレッドと同じくらいだが、不思議な姿をしている。夜のように真っ黒い髪に真っ黒い目だ。アルフレッドはそんな色彩を持つ人間をこれまで見た事がなかった。
子供はあどけない表情で彼を見上げている。髪が黒くて目の色も黒い事を除けば、普通の子供に見える。もしかして彼の遊び相手に父親が連れて来てくれたのかもしれない。今まで周囲に年の近い遊び相手がいなかったアルフレッドは、期待を込めて尋ねた。
「父上、誰ですか?こいつ」
厳格な父は息子の言葉使いに眉をひそめたが、質問には答えてくれた。
「シンだ。今日からお前の弟になる」
「弟!?」
驚きのあまりあんぐりと口を開けたアルフレッドに、シンと呼ばれた子供はにこりと笑った。
アルフレッドはシンの髪に触ってみた。本当に黒い。染めているわけじゃなさそうだ。アルフレッドの髪は赤みの強い茶色で、目の色は暗赤色。父親も母親も赤茶色で、黒髪は親戚中探してもいない。弟なんて嘘に決まってるとアルフレッドは思った。
歳を聞けば彼らは同じ十二歳。同時期に浮気すれば同い年でもおかしくはないが、アルフレッドはシンと血がつながっているとはどうしても思えなかった。
後日母親にさりげなく聞いたが
「子供は知らなくていいの。兄弟仲良くね」
と返された。
城で騎士をやってる父親は息子に隠し事ばかりしている。きっと何か事情があるのだろう。
だが、大人の事情などどうでもいい。遊び相手に飢えていたアルフレッドは、シンと仲良くする事にした。
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