赤い瞳を持つ者

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 むかしむかし、緑豊かなモリガナという小さな国がありました。国王エドワードは己の治める国を、そして民を愛していました。妻マルタも同じように、国と民を、愛していました。  そんなある日、マルタが子供を身ごもりました。国民たちは盛大にお祝いをしました。  そして十月十日(とつきとおか)の月日が流れ、マルタは無事、出産しました。生まれたのは女の子でした。王女の誕生です。髪色はどうやらマルタと同じ銀髪のようでした。モリガナは王女の誕生に、お祝いムード一色に包まれます。  しかし、そんな幸せは長くは続きませんでした。赤ん坊がようやく、目を開けたその時、マルタは発狂しました。娘の瞳は、化物のような、人間ではありえない赤い色をしていたからです。  モルガナでは、赤い瞳は災いの象徴であり、人を不幸に陥れる化物とされてきました。エドワードもまさか自分の娘が、不吉な色を持って生まれてくるとは、思いませんでした。  エドワードは、とある決断を下します。それは、王女を国外へ捨てること。国民には、王女は病で死んでしまったと知らせを出すことにしました。  エドワードはすぐさま若い従者カルトを呼びつけ、国外へ捨ててくるよう、命じました。  忠実なカルトは人々が寝静まった夜、王女を抱えて城を出ました。  カルトは赤ん坊の王女に気を使いながら、ある場所へと向かいます。たどり着いた場所は、モルガナと隣国フェルガにまたがる森でした。  カルトはどんどん奥へと進んでいきます。やがて、立派な小屋が見えてきました。  カルトは馬から下りると、迷わず小屋の戸を叩きます。すると一人の女性が、姿を見せました。カルトの母であり、その森に住むミリアです。  ミリアは息子が帰ってきたことに、喜びました。そしてカルトの腕に抱かれている赤ん坊に、目を落とします。  カルトは事情を母のミリアに語り、赤ん坊を差し出します。ミリアは喜んで王女を受け取りました。  カルトは赤ん坊の頬を優しく撫でると、城へ帰り、虚偽の報告をしました。「王女は隣国のフェルガ王国の森に、捨ててきました」と。  こうして、モルガナの王女は、密かに育てられることになりました。
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