人間鯉のぼり

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小学校5年の春。アイデアマンの私は、また良い事を思いついた。 もうすぐこどもの日。鯉のぼりごっこだ! バレーボールネットポールの肩の高さ辺りをバット握るグリップで持った腕を伸ばし、友人H君に私の開いた両足首を持って、体が地面と水平になるよう引きながら持ち上げるよう指示。 脳内には、ポールから鯉のぼりのようにたなびく私の雄姿がイメージされていた。 が、足が引き上げられ、体重の半分がポールから伸びた腕にかかった瞬間、支えきれない腕が上に、いや、体が下に勢いよく振り落ち、恰も除夜の鐘の撞木如く、顔面からポールに激突した。私の「ああー!」という叫びも、「ゴッ」という激突音に消えた。 どうして良いか分からず、指示のまま手を離さないH君。力尽きた私はズルズルと上半身を地面に落とした。 いつまでも、血染めの人間一輪車の持ち手、いや私の足首を茫然と持ち続けるH君に虫の息で言った。 「保健の先生呼んで来て」
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