『受け継ぐもの』編

19/24
前へ
/937ページ
次へ
 いわれてみればそうだ。勇治は一般的な採用プロセスも訓練プロセスも経験していない。チェックアウト後はまだしも、チェックアウトに至るまでのプロセスは勇治のための特別なプログラムだった。 「今日、お二人にお話し伺えて、本当に良かったです。私、覚悟決めました」  目の前のエプロンをプッシュバックする機体がエンジンスタートを始めた。この音は、おそらくB767のCF6エンジンだ。低音が立ち上がり、回転数が上がるにつれて音が高まり、力強くなっていく。それは夏樹の心に宿る、空へ向かう胸の高鳴りと結びついているようだった。
/937ページ

最初のコメントを投稿しよう!

77人が本棚に入れています
本棚に追加