<第一話・拒否>

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 *** 「あーもうっ!人間は馬鹿なんですか馬鹿なんですよねっ!クッソウゼェ!!」  ポーンと首だけになって吹っ飛んでいった男を見ながら、美貌の青年――ニャルラトテップはうがーっ!と絶叫した。 「私はニャルラトテップですよ、外なる神ですよ邪神ですよ!?それがなんで“妻との結婚指輪をなくしてどーしても見つからない、このままじゃぶっ殺されるから助けてくれ”なんてお願いを聞かないといけないんですかっ!私は便利屋じゃねーっつーの!!」  そう、たった今首がすぽーんと抜けてご臨終したその男。願いは呼び出される前からわかっていた。なんといってもこちらは神様だ。召喚主が何を考えて自分達を呼び出すかなど、呼ばれる前から大体把握は可能なのである。  とにかく今回“も”、ツッコミどころが多すぎる案件だった。召喚主の男が古本屋で見つけた魔導書で自分を呼び出した理由が、なんと“どーしても見つからない婚約指輪を探してくれ” である。ナメてるとしか思えない。いや、大切なモノをなくしてしまうのは仕方ないが。彼の場合は“なくした事がバレて妻に殺されるのが怖いからなんとかして”というしょーもない理由のおまけ付きである。  神様をなんだと思ってるのか。しかもこちとら由緒正しき邪神サマである。ニャルラトテップと言ったら、クトゥルフ神話の知識が乏しい人間でも大抵名前くらいは知っている、そんなレベルの超有名な外なる神だ。それがどうして、こんな人間の馬鹿馬鹿しいお使いに付き合わされなければならないのか。自分を何でも屋かなにかと勘違いしているのではないか?  しかも、呼び出された魔方陣がまた酷いのである。――誰だ、“魔方陣の中心に萌え絵を描くとニャル様を呼べちゃうよ☆”なんて魔導書モドキに書いて広めたバカは。中途半端に魔方陣の“型”があってるせいで、無視したくても寝てる隙に何度引っ張り出されてしまったことか。
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