第六章 海水と灰

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「そうか……栗林も、設計図を売ったのか……」  栗林は、家畜で試した成果と一緒に、設計図を世羅経由で売ったのだ。  そして、世羅は同じ恨みを持つ者を募り、寄付金を支払わせた。参加者は、復讐したい相手の最後を見る代償に、自分の復讐相手ではない時に労働を強いられた。  航空写真を確認すると、重低音の発生装置は、海に隣接する倉庫付近にあった。その倉庫の持ち主を調べてみると、孫が失踪していた。 「この街は、痛みに満ちている……」  ここでは過去に、子供や友人、そして近所などの家族が、次々と犯罪に巻き込まれ消息を絶っていった。そして、二度と会う事の無かった、今現在という未来に住んでいる。皆が心に痛みを抱え、この事件が終る事を願っている。 「……そうか、栗林はトラウマになっている、売春というワードに反応し、浅井を殺さずにはいられなかった……」  栗林は、もう一度、あの苦しかった過去がやって来る事を恐れた。
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