第六章 海水と灰

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 俺は捕まっていた橋の縁に両手を掛けると、上によじ登った。しかし、内薗に捕まらないように、欄干を走ると隅で止まった。 「内薗、何の用?」 「公安から、海水の化け物と、成分が鉄に近いクリップを貰った」  公安は内薗に、成分の解析を頼んだらしい。液体はややとろみがあったが、成分は海水の枠内に収まった。しかし、海水が時々、指を出したり逃げようとしたらしい。しかも、微かな振動にスピーカーを付けてみると、言葉になっていた。 「液体は、苦しい溺れると言った。他に、真っ暗で何も見えない、ここから出してと言っていた」  液体になっても、意識があるというのが恐ろしい。内薗のスタッフが、そのまま会話の続行を試みたが、四十三秒会話すると、四時間二十七分二十一秒が経過しないと次の返事が返って来ない事が分かった。しかし、液体は連続して喋っていると思い込んでいて、それだけの時間が経過している事に気付いていなかったという。 「成分が海水なのに、あれは海水なのか?」
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