第六章 海水と灰

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 内薗がそっと近寄ってきて、俺の手を握っていた。内薗も俺の癖を見抜いていて、興味があると、その場から動かない性質を見抜いている。 「意識というのは、脳にあると思っていたけど……この海水を突き止めれば、どこに在ったのか分かるのか?」 「意識ではなく、魂の存在だろう。魂が何処にあるのか?そもそも、魂などというものが存在するのか?哲学と生物学の融合みたいなものだな……」  だが、内薗は海水にクラゲを入れてみて、生存できるのか試していた。採取した海水にはプランクトンは生息していなかったので、酸素とエサを追加して、水槽で飼っているという。 「クラゲが、時々、人の顔になってホラーだよ」  内薗は真面目に観察しているが、よくクラゲを思いついたものだ。俺は海水だけでもホラーなので、それ以上の事はしたくなかった。だがクラゲは、他の研究所から視察が来ていて、盗まれそうにもなったらしい。
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