第六章 海水と灰

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 クリップは振動を受信でき易い仕組みがあり、スピーカーのように音を増幅させる効果もあった。 「あのクリップと、この周波数で人が分離する」 「んん?これは、地球の内部から発生する周波数にあった……もっと調べる」  内薗を帰すには、別のものに興味を持たせればいい。しかし、まだ内薗は俺の手を放さなかった。 「人は海から生まれた。海は何から生まれたのだろう。そもそも、進化では人間は生まれない。人はどこから来たのだろう」  内薗は海を睨んで、何かを計算していた。 「俺は、人間をベースにしているけど、人造人間だ。だから、リミッターが付いていない。倒れるまで頭を使ってしまうし、骨が折れるまで力も出せる。人間は限界を制御されていて、これはまるで、設計されたプログラムだ」  俺は、人間から離れてみて、人間の凡庸という凄さを知った。リミッターが壊れて超人になる、そうやって意図的にリミッターを壊す者もいるが、凡庸という凄さを理解していないのだ。俺など、つい暴走して、肉体の限界がすぐに来てしまう。だから、自然と睡眠という充電時間が長くなってしまうのだ。
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