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俺が愛彩の元に辿り着くと、近衛が愛彩を介抱していた。愛彩に外傷はなく、鍾乳洞は外から中に海風が吹き込んでいて、酸素濃度も薄くはないので酸欠でもない。何故、倒れていたのかと愛彩を見ると、横に保温ポットとカップに残ったコーヒーが見えた。
「眠らされたのか……」
橋本の方に近寄ってみると、殴られたようで、頭を押さえていた。
「何がありました?」
橋本の意識はあったので、事情を聞こうとすると外に逃げようとした。すかさず西海は蹴り飛ばし、橋本を転ばせると取り押さえた。
「殺したのではないのでしょう?彼女達は自殺だった……」
橋本は顔を背けると、少し頷いていた。
「……そうです。菊池は、とある社長に気に入られて、何度も指名を受けていました。清楚で大人しく、優等生だったのが気に入った理由だったようです」
だが、何度もの指名は、逆に菊池を追い詰めていった。この世界から抜けられない、自分は汚れてしまったと、菊池の精神が不安定になってきていた。
「汚れてしまって戻れない、そう呟いて消えたと思ったら、シャワー室のドアノブで、ガウンのベルトを首に巻いて死んでいました……」
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