第七章 海水と灰 ニ

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 俺が愛彩の元に辿り着くと、近衛が愛彩を介抱していた。愛彩に外傷はなく、鍾乳洞は外から中に海風が吹き込んでいて、酸素濃度も薄くはないので酸欠でもない。何故、倒れていたのかと愛彩を見ると、横に保温ポットとカップに残ったコーヒーが見えた。 「眠らされたのか……」  橋本の方に近寄ってみると、殴られたようで、頭を押さえていた。 「何がありました?」  橋本の意識はあったので、事情を聞こうとすると外に逃げようとした。すかさず西海は蹴り飛ばし、橋本を転ばせると取り押さえた。 「殺したのではないのでしょう?彼女達は自殺だった……」  橋本は顔を背けると、少し頷いていた。 「……そうです。菊池は、とある社長に気に入られて、何度も指名を受けていました。清楚で大人しく、優等生だったのが気に入った理由だったようです」  だが、何度もの指名は、逆に菊池を追い詰めていった。この世界から抜けられない、自分は汚れてしまったと、菊池の精神が不安定になってきていた。 「汚れてしまって戻れない、そう呟いて消えたと思ったら、シャワー室のドアノブで、ガウンのベルトを首に巻いて死んでいました……」
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