第七章 海水と灰 ニ

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 橋本は弁明になるが、菊池を殺すつもりは無かったという。むしろ彼女が好きで、東京の大学に進学したら、同棲しようと約束していたらしい。 「同棲しようとしていたのに、その彼女が他の男に抱かれていたのを、黙って見ていたの?」 「金が欲しかった。俺も同じ事をして金を稼いでいた。だから二人で汚れていれば、いいかと思った。それに、菊池の相手は男ではないですよ。女性です」  相手が女性であったので、余計に菊池は病んでいった。そして、菊池が自殺すると、やっていた事がバレないように死体を隠した。 「……菊池の体には、女性から受けたキスマークや痣、縛られた跡が大量にあった。そんなものを見られたら、菊池の優等生のイメージが崩れてしまうでしょう?菊池も誰にも知られたくないと言っていた」  橋本は生きている内に、何も菊池の願いを叶える事が出来なかったと思い、最後の願いだけは守り抜いた。菊池は優等生のままで、失踪した事になった。
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