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私じゃない誰かと写る彼
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差出人:桐島 京介
○月○日○曜日 21:46
件名:体調、大丈夫そうだな。
やはり千尋が居ると違うな。チーム全員の覇気が違う。
お前はこの三ヶ月、ちゃんと自分の居場所を作っていたんだな。
……もう、戻ってくる気は無いのだろうな。
見ればわかる。
体調、大丈夫そうには見えたが、無理はするな。
俺もなるべくお前に近付かない様にするから。
ただ、視線だけは、許して欲しい
おやすみ。
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『視線だけは、許して欲しい』
文末の言葉に、ぎゅっと胸が切なくなる。
彼に酷い事をされたのは私の方なのに、どうして私がこんな思いを抱かなければいけないのか。
彼のメールを閉じてから、指先をずっとスライドさせて、三ヶ月前の一つのメールへと行き着く。
消したくても、消せなかったそれには、ロックがかけてある。
彼にされた仕打ちを、忘れない様に。
彼の事を思い出しても、これを見て心を戒めることが出来るように。
そこには、私じゃない誰かと写る、彼の姿があった。
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