お静かに。

１

夢を見ている。

目の前にツルリとテカる頭の坊さんが派手な金色の袈裟を羽織り、大きな木魚を打ち鳴らして紫色の着物の袖を揺らしている。
その前には五つもの黒縁の額に収まる写真が横に一列となって並んでいた。

(ああ、これは葬式.......)
そう、私は理解した。

私は真っ黒なワンピースを着ている。
ゆるりと首を回して周囲を伺うと、隣では母が、その向こうでは父が悲しみを堪えるかのように顔を下げ、体を強張らせて座っていた。
私は最前列の通路の側に座っていて祭壇の様子はよく見えるけど、後ろの光景は目にするのを憚られるほど辺りは重い雰囲気を漂わせている。

ここは恐らく広い。
坊さんの頭の反射と同じくらいに読経の声が反響しているし、それは部屋の天井の隅に設置されるスピーカーから届くことから、そう判断する。

(これは夢ね)
正面に向き直り、私はそう、納得させた。
夢、でなければ私の頭が可笑しいと言わざるを得ない状況なのだから。