お静かに。

２

「どゆ事？」

おたおたとしながらも口を開き、改めて周りを見回した青年は、自身が黒縁写真から浮き出ていることと、黒服だらけの人々を眺め、ライトに照らされ光る坊さんの頭に目を細めた。

「覚えてないかなー？私たち同じバスに乗り合わせてたのよ。ツアーの」
「その帰りに事故が起こって、僕たち5人が犠牲になったらしいのですよー」
「その合同葬儀中でーす」

ケラケラと笑い声を上げつつ、女性と男性は状況を簡潔に説明してくれた。
知らずと青年は再び場内に目を向け、こちらを凝視する視線と目が合った。

「あ、ユイ.......父さんと、母さんだ」

自分の家族が最前列にいた。

「私はルミ、写真は若いけどホントは36才よ」
「あ、僕はハンダといいます。会社員で、毎年このツアーを使って温泉旅行を趣味にしてますー」
茫然とする青年に向かい左隣の2人は軽く自己紹介をしてきた。

「俺は、ユウ.......大学3年です」
あまりにもあっけらかんとしている2人に、幽体であることも理解及ばず流され頭を下げた。
流れで右隣に顔を向けると右の女性は目を吊り上げ睨みを効かせていたため、つい、小さく悲鳴を上げその形相に震える。