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軽い調子で乾いた笑い声を吐き出すハンダも、やはりどこか寂しげだ。
だから、笑い返すことも何かしら声を掛けることも出来ない。
当然だろう。
ただ、旅行を楽しんで帰宅していたのだ。
まさか事故に遭い死んでしまうなど、予想もしない出来事だ。
ユウは順番に手を合わせてくる参列者を見詰める。
並んで焼香を済ませるのは家族、親戚、友人知人。
自分と並ぶ者たちの見知った顔ぶれだろう。
正面に来ては両手を合わせて辛そうな顔をして見詰めては席に戻っていく。
ユウの家族の番となった時、妹のユイが能面のような顔のまま自分を直視して焼香台へ向かって来た事に違和を感じた。
(まさか、な?)
と思いながらも、親に倣って手を合わせ終わったユイに微笑みかけてみた。
ユイは口を半開きに、瞬きもせず固まったままの顔で油切れのロボットよろしく席に戻った。
(見えてるのか?!)
ユウ自身も驚き止まっている心臓が跳ねた気がした。
妹に霊感があったなどと死して初めて知る衝撃の事実。
もっと早く知っていれば肝試しやお化け屋敷に引っ張り回したりしなかったのに!と、ユウは少しだけ後悔した。
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