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参列者全員の焼香も済み、葬儀は滞りなく速やかに終わりへと近付いた。
お坊さんの読経も調子良く更にリズミカルに、木魚や銅鑼と相まってエンディングへと高揚感を醸し出す。
これで昇天出来るのか?と不思議に思いながらユウはお坊さんの揺れる頭の反射線を追っていた。
「あー、これで終わりなのかなぁー」と、いかにも残念だと言わんばかりにルミがボヤいた。
カスガがギリリっ!と音が鳴るほどの視線を飛ばしたが、それも気にせずルミは不満気な顔で頬を膨らませてむくれている。
「何か、思い残し、というか、心残りがあるんですか?」
つい、当たり前な言葉が吐いて出た。
当然、だよな。
まだ『明日』は来ると思っていたんだ。
バスに揺られながら『楽しかった』などと思い、『明日から学校か』なんて溜め息吐いてたんだ。
気付いたら自分の葬式だなんて、思いもしなかった。
ルミがユウの質問に軽く息を吐き出し黒縁に肘を立てて顎を両手で支えた。
「あるわよー。私、写真嫌いで最近全く写して無かったんだけどさー、だからって高校の卒業アルバムから引っ張り出して来なくてもいいと思わない?!これ20年近く前のよ?!学生服なんだけど!」
ルミは不満をぶつけるかの如く自分の遺影をバシバシと叩いて主張した。
少しだけガラス板にヒビが入る。
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