13人が本棚に入れています
本棚に追加
"証明写真をご提示ください"
定期旅客船から降りた後、手荷物を受け取って建物の外へ出ようとした途端、目の前に黄色い警告文字が浮かんだ。
警告にはいくつか種類があり、黄色い文字の場合は注意を促すもの。これらを無視することもできるが、リミットは五回。その後、赤色警告に変わり、それを三回無視すると罰則が科せられる。
冗談じゃない。
新生活への第一歩を踏み出す前に、強制送還されてたまるかよ。
空中に浮かぶ警告文字を睨む俺に気づいたか、職員が近寄ってきた。
「お客様、どうかされましたか?」
「いや、警告が出て、証明写真――」
「ああ!」
こちらがすべてを言い終える前に合点したように頷き、笑みを浮かべた。
「他星域から来られた方ですね。この国では、すべてにおいて『証明写真』が必要なんですよ」
証明写真とは、その名の示す通り、自身を「証明」するもの。
そこにはありとあらゆる生体情報が記されており、提示することで、すべての施設で生体認識されるという。
セキュリティ対策としては、虹彩認証を採用する国がほとんどだが、ここでは独自のシステムが構築されている。
星域一帯に発生している宇宙線の影響なのか、ジャミングがかかっており、一般的なネットワークが使えないせいらしい。
ゾール55の情報を調べようとして接触できなかった理由は、これだったようだ。
最初のコメントを投稿しよう!