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宇宙港を出る前に、サービスセンターに立ち寄ることにした。
証明写真とやらをどう扱えばいいのか、予備知識を仕入れておくべきだと判断したからだ。
旅行者に発行される期間を限定した物があれば、進学や留学、あるいは単身赴任といった形での、永住権を持たない人への物もある。
この星に住んでいる人は、生まれた時に病院で発行されており、成長の早い幼年期は一年置きに顔写真を撮り直す必要があるという。
俺が手にしているのは、学生用の証明写真。年単位で在住することを前提にした機能が備わっている。
例えば、支払い。
家賃や光熱費といったものだけではなく、日々の細々とした買い物も証明写真で決済が可能なため、現金を持ち歩く必要がないそうだ。
「口座変更も可能です。購入品によってお支払いを分けられる場合は、その都度、選択してください」
「どんな口座でも指定できるんですか?」
「主要な銀行は取り扱っております。地方銀行などには対応していない場合もありますが」
俺が持っている口座は、銀河星系における三大銀行と呼ばれる大手のひとつ。問題はない。
「現金を使う場所はないんでしょうか?」
「ないわけではありませんね。例えば、一時的に立ち寄っただけの方などは、数時間の滞在のためだけに決済登録をする方はいません。銀河共通の通貨単位であるプロンを採用しておりますので、もしもの時はお使いになってください」
対応してくれたお姉さんがやたら美人だったこともあり、俺はついつい長居をして、あれもこれもと訊ねてしまった。
お姉さんは嫌がりもせず、すべて笑顔で答えてくれた。
いい人だ。
そして、すげーいい匂いだった。
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