眼鏡

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登校中に見掛けた30歳は過ぎていそうな知らない男性を一目見て気になった。 その男性は、女性とすれ違う度に目で追っているので女性に興味があるのだと見てて分かる。 俺は黒淵眼鏡を貰った時を思い出して、同じ様に男性に黒淵眼鏡を渡して使い方を説明した。 男性は全く信じていない様子だが、俺が眼鏡を貰った時と同じく期待もしているのだろう。 使い方の説明を終えると直ぐに男性は黒淵眼鏡を掛けて柄の部分を触っていた。 そして、奇声を発すると女性に近付いて行きジロジロと見ている。 あれはダメだろう。 すると、たまたま通り掛かった警察官に職務質問されていた。 男性は突然走って逃げ出したが、直ぐに警察官に取り抑えられて捕まった。 その様子を多くの野次馬が見ていたが、通勤や通学する人ばかりなのか直ぐに人だかりが消えていく。 警察官が男性を捕まえた場所の近くに黒淵眼鏡が落ちているのが見えた。 それは、俺が男性に渡した眼鏡だ。 眼鏡が落ちている場所は近くに誰も居なかったので怪しまれずに簡単に拾う事が出来た。 元々俺が男性に渡した眼鏡だから拾って持って行くのは問題無いはず。 もう、この眼鏡を誰かに渡すのは危険だから止めよう。 壊れるまで俺が使えば、今のような問題は今後起きないだろう。 掛けていた普通の眼鏡を外して黒淵眼鏡に掛け替える。 黒淵眼鏡のボタンを押してダイヤルを回す。 あれ?何も変わらない。 眼鏡を渡した男性と警察官が揉み合った時に落ちて壊れたのかな? ダイヤルを回しても、ボタンを押しても何の変化が起きなかった。 これで騒動は二度と起きないだろう。 それにしても、この眼鏡は何だったのか? 誰かが作った物なら、何個もあるのかも知れない。 面倒な事に巻き込まれるのは嫌だ。 この壊れた黒淵眼鏡を学校から帰った後に自分の部屋で処分しよう。 俺は騒ぎで遅れた時間を取り戻すかの様に早歩きで学校に向かった。 それにしても、参ったな。 手に持った壊れている黒淵眼鏡を触りながら教室内の女の子を見ると、眼鏡を掛けてないのに昨日見た時と同じくお腹が透けて内臓の中身まで見えていた。 視線を向けた場所が良く見える。 あの男が言っていた通り、この黒淵眼鏡は透視能力開発用眼鏡だった事が証明出来た。 毎日、気になっていた女の子の中身が見えてしまうのは気が狂いそう。 好きな女の子が俺以外の男性と毎日している事が体内を泳ぐ物で分かってしまうのだから。 何も知らない事が俺にとって幸せだったのだと気付く。 二度と自分に似合わない眼鏡なんか掛けるもんか!と心に誓った。
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