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遠くに水平線が見えていた。
天気も良く、気温的にも暖かなある日。
観光地の展望台は人でにぎわっていた。
「おー、すっごい眺めぇ!!」
展望台の欄干に飛びつくようにして景色に食いついたのは、玉原花楓という名の女子だった。こげ茶色の髪をなびかせて通り過ぎる風に潮の匂いを感じながら、花楓は深呼吸をした。
進学先の大学も決まり、後は卒業式を待つだけの解放感。それは、彼女の工法を歩いている親友の二人にとっても同じだった。沖本桂里奈と三輪遥、そして花楓は中学時代からの付き合いだった。
高校最後の休みに卒業旅行に行こう、と花楓が言い出した。
二人はそれを快諾した。
何しろ、気軽に集まったりできるのは、ひとまずこれが最後になる。
三人ともそう予感していたからだ。
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