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返却された本を所定の本棚に戻していると、書棚と書棚の間の通路に、B5サイズの ペーパーフォルダが落ちていた。
「…忘れ物?」
図書委員会の規定では、忘れ物落し物は返却カウンター横の忘れ物箱に入れておくのだが、橋田慎(はしだしん)は、つい気になって中を見てしまった。
「だって、中に持ち主が判るものがあるかもしれないだろ」
そう呟いて。中に入っていたのは、数本のペンが入ったペンケースと罫線も何も引かれていない真っ白なノート。ノートの下には名前が書かれていた。『竈門楓』と。
「…うちのクラスの?」
楓は、少しばかり浮いている女子生徒だった。大抵の女子生徒のように特定のクラスメイトと群れることもなく、いつも一人で、本を読んでいるか、ノートに何かを描いている。手の動きから、あれは絵を描いているのだろうが、誰かが覗こうとしても異常に高い警戒心の持ち主で、誰にも見せなかった。
「…落とす方が悪いんだよな」
また言い訳を言いながら、フォルダの中に入っていたノートを開いた。
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