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昼休みが終わって教室に戻ると、楓はいつも通り窓際の自席に座っていた…のだが、今日は、どこか酷く慌てた様子で、机の中を見てバッグの中を見て、を何回も繰り返していた。
「竈門さん」
慎が声をかけると、楓は野良猫のように体をびくりと硬直させた。
「これ、図書室に落としていたよ」
慎が楓のペーパーフォルダを差し出すと、マタタビに飛びつく猫のように奪い取り、それから慌てて言った。
「中、見たの?」
「いいや。名前を探しただけだ」
「…拾ってくれて有難う」
楓はそれだけ言うと、いつものように自分の殻に閉じこもった。
慎も自席に就き、それから一人でこっそり呟いた。
「本当はノートの中を見たけどな」
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