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数週間後、楓は大きく膨らんだ封筒を持って柳の事務所、楓が客と初めて顔を合わせる場所、に一人で来ていた。
「よお楓、仕事がしたいのか?」
柳も、周りに立っていた男達もにやにやと笑っていた。
「……」
楓は無言で分厚い封筒を柳の眼前に叩きつけた。
「なんだ、この封筒…」
「数えて」
「は…?」
「全部で500万円入っているわ。これでもうこの仕事は辞めさせて」
「なに…」
「部屋の荷物は今日中に引き払うから、もう私に関わらないで」
足早に立ち去ろうとした楓の進路を、男たちが阻んだ。
「そうはいくかよ、楓。お前のその顔と体にはまだまだ稼がせてもらわないとな!」
「止めて!」
楓が悲鳴を上げると同時に男たちは一斉に楓に圧し掛かり、来ていた制服を乱暴に破き始めたのだが…。
「警察だ!大人しくしろ!!」
武装した制服警察官隊がどっと事務所内になだれ込み、柳を筆頭に男たちは一斉に捕縛され、現場指揮を任された刑事の保元は着ていたスーツの上着で、半裸状態の楓を包み込んだ。
「病院に行こう、竈門さん」
「…はい…」
「相当な回数を強姦され中絶していますね。あれは、一回2回の話じゃないでしょう」
楓を診察した医師は、呆れ気味に保元に告げた。
「…子供相手に、なんて真似を…彼女は?」
「薬で眠っています。この後も婦人科での治療はありますが…」
そこまで話したところで、ドアがノックされた。
「教授、保元刑事、あの…」
教授つきの看護師の一人が顔を覗かせた。
「なんだ」
「男の子が、あの子の見舞いをしたいって…どうします?」
「だから面会謝絶だと…」
「ちょっと待ってくれ、もしかしてそれは、橋田慎君か?」
「あ、はい、そうです」
「おれが行こう。教授、また後で」
「構いませんよ」
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