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「 …… 清十郎様、 必ずしも目に見えるものが全てとは限りませぬ。 現に化け物は人知れずいつの間にか体内に入りこみ徐々に身体を蝕み弱らせていき終いには命すらも奪ってしまいます。 」
化け物に侵された者は、とんでもない倦怠感や関節痛から始まり数日の間に嘔吐や高熱に魘され激しい咳と頭痛に苦しまされた挙げ句肺を蝕われ死ぬ。死んだ者の傍らにいた者すらも順に同じように倒れていったとのこと。
マツは薬師としての知識があり1人息長らえてはいたものの、自分も化け物の毒牙にかかりつつあることをすすり泣きながら話した。
「 申し訳ありませぬ、 清十郎様。 マツは、…… マツは1人死に行くつもりでしたが最期にどうしても殿方からの愛を受けたく清十郎様を家に招き入れました 」
泣きながらそのようなことを申された清十郎は思わずマツの腕を引き自らの懐に閉じ込めました。
「 泣くな、泣くなマツ! これも何かの縁、…… 某が側にいてそなたを見送ってやろうぞ 」
マツをきつく抱きしめる清十郎にマツは涙を流し背に手を回しながら何度も何度も礼を言い胸の内で新たな獲物が手に入ったと怪しく笑んだとさ…… 。
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