【サンプル】恋花

雨の日の憧れをあなたと

関係ないと思いながら
きっと　ずっと
憧れていたんだ

いつも幸せそうに
並んで下校する
二人の後ろ姿を見ながら

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　急ぎ足で家庭科室を駆けだしていく後ろ姿をいつも羨ましいと思っていた。
　幼い頃からずっと近くにいたから、綾花の気持ちはアタシが一番よく知っていたと思う。というか、二人とも、かな。牧元くんの恋愛相談も受けていたわけだし？
　雨の日に告白して、外で立ち尽くしていた綾花に連絡とって、家に入るように促したのだってアタシだし？
　二人に感謝してほしいなんて言うつもりはないけど、ただ羨ましいなってずっと思ってたんだ。だからかな。
『明日、アタシは傘を忘れていく予定だから、迎えに来てね』
　なんてかわいくないことを送りつけてしまったのは。
　一緒の傘で帰りたいから迎えに来て、なんて言えるわけないでしょ？　キャラじゃないし。
　普段だって自分からは連絡なんてしないし。デートはいつも景さんに誘ってもらってばっかだし。電話どころかメールだってしないのに。
　景さんの都合だってあるし、アタシにばっかり時間使ってほしくないし、自分の時間だってほしいだろうし。なんて考えると、連絡できないだけなんだけど。
　由佳ちゃんはドライだよね、で通っているらしい。
　大学からの友人でよく一緒にいる礼二さんって人にも、甘えない彼女認定されているらしく。余計にわがままとか言いにくくなった。
　ま、まあ、普通の人よりは我慢することには慣れてるし？　景さんを好きになるまでも、あの人は周囲の女の子たちの憧れの的だったから、本当にいろいろあった。いじめなんて言葉じゃ片付かないこともたくさんあったし、おかげで高校辞めるハメになったし。
　普通に考えたら、どうして某事務所所属系アイドル顔の景さんが、アタシみたいな女らしさのカケラもないような女に惚れたんだって話だし、まわりの子たちもそう思ったみたいではあるんだけどね。
　景さんは恵まれた見目のせいでいろいろあった系の人らしくてさ、元カノさんが自殺してたりする、ヘビーな過去があるみたい。
　だから、どこまで踏み込んでいいのか時々迷うんだ。

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