ハウスクリーナー

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 昔からそこそこ綺麗好きで、部屋の掃除は自分でしていた。当然、一人暮らしを始めても部屋が汚れるようなことはなかったけれど、ここ最近は仕事が忙しすぎて、思うように掃除が行き届かない。  そんな時、ハウスクリーナーの存在を知り、一度頼んでみることにした。  休日に、ぐったりしている俺の目の前で、みるみる部屋が綺麗になっていく。  プロの仕事は凄いなと感心し、仕事ぶりを目で追っていたのだが、時々清掃員の人が、何をしているのか判らない動きをしていることがあった。  少し気になったが、口を挟むのは何となく憚られ、俺は掃除の一部始終を見届けた。  部屋が完璧に綺麗になり、その様子に感動ていると請求書を渡された。  あらかじめ予約を入れておいたので、金額はだいたい判っている。後は、汚れの度合いによって多少増額されるということも承知済だ。  キッチン、リビング、風呂場にトイレ。どこもそこまで汚れてなかったらしく、当初予定した通りの金額だ。  でも一番最後に一つ、妙な項目が追加されていた。 『霊…二体確保』 「あの、これって…」 「ああ。それですか。迷い込んだらしき浮遊霊が何体かいまして、たいていは追い払えばすぐ出て行くんですが、二体、地縛霊になって居座ろうとしていたので、捕獲しておきました。除霊はこちらで行いますのでご安心ください」  そう言われたところで、ああそうですかとなる筈もない。  さも当然のオプションのように説明されたが、幽霊を確保した金額が上乗せされるなんて、普通に考えたら詐欺行為だ。  それでも、そんなのは詐欺だと強く出られず、俺は、例というものに関心があるふうを装って、捕獲した幽霊を見せて欲しいと頼んでみた。 「普段目にしてない方には、まず見ることは不可能ですが、気配は感じることができると思いますよ」  清掃員そう言い、何やら厳重に口を縛った白い袋を俺の前に掲げた。  それを見た瞬間、ぞくりと背筋に寒気が走った。  時々家の中にいて、意味もなく寒気を覚えることがあったが、今の感覚はそれとまったく一緒だ。  一瞬で相手の話を信じ、俺は請求通りの金額を支払った。  まさかこの家に幽霊が入り込んでいたなんて。でも、部屋の汚れと共にそれは綺麗になくなった。  ハウスクリーナーって凄いなぁ。  掃除自体はなるべくこまめにするけど、イヤな気配を感じたら、あのオプションだけでも申し込むとしよう。 ハウスクリーナー…完
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